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長岡には市民協働や米百俵の精神で、子どもたちや若者が挑戦し、夢をつかめるまちづくりに貢献しようと活動する人たちがいます。その活動に込める思いや目標を通して、長岡の未来をお話しいただきました。
【進行はFMながおかパーソナリティの山田光枝さん】
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座談会の会場は、令和5年7月にオープンしたミライエ長岡の「ミライエハウス」。ワークショップやセミナーなども行われる
山田(進行) 新型コロナウイルスの影響で大きく変化した世の中。昨年は、新しい形で日常を取り戻しつつある1年でした。
市長 今、この先どうなるのか分からない、先行きが予測できない世の中だと言われています。しかし私は、いつの時代も若者たちは希望に満ちていると思っています。今日は、長岡の未来を担う子どもや若者が新しい時代を生き抜くための力を育む活動をしているみなさんから夢を語っていただきたいと思います。
山田 それは楽しみです。まずはみなさんの活動を伺いましょう。
廣川 絵本セラピストとして、子育て支援施設や保育園などで絵本の講座を開催しています。お子さんや保護者一人ひとりと向き合い、対話することを大切にしています。令和3年からは教育委員も務めています。
佐藤 米農家に嫁いで10年です。農業を通じて小学校や幼稚園の子どもたちへの食育にも取り組んでいます。令和3年に、女性農業者同士の交流や情報交換の場となる団体を立ち上げて活動しています。
長井 IT関連会社を経営する傍ら、子どもたちにものづくり技術を伝えたいと、20年前からロボカップジュニアの運営委員を務めています。
山田 もう一人は、長岡で活躍する若者の代表としてお越しいただきました。
松田 パラ陸上選手として、市内の陸上競技チーム「長岡AC」に所属しています。自分の持つ日本記録(脳性まひT37)100メートルの12秒44を超えたいと練習に励んでいます。
市長 陸上を始めたきっかけは何ですか。
松田 姉たちがスポーツをしていて、自分もやりたいと思いました。リハビリで通っていた長岡療育園の園長先生が「障害があっても活動の制限はない。積極的に体を動かしなさい」と言ってくれました。本格的に競技を始めたのは、新潟市で参加した陸上教室の先生の勧めです。
市長 背中を押してくれる人がいたんですね。
松田 新聞で私の記事を見た障害児の親御さんから、子どもに陸上をさせたいと連絡が来たことがありました。走る自分の姿が、誰かの気持ちを動かすきっかけになったことはうれしかったです。
市長 市もパラスポーツの普及を進めています(写真①)。長岡の子どもたちに松田さんの体験をぜひ話してください。廣川さんは子どもとの対話の手段として本を選ばれた。どんな思いがありますか。
廣川 私は、子どもたちに本の読み聞かせをするとき(写真②)、言葉との出会いを大切にしています。子どもたちが幼少期に出会う絵本に出てくる言葉には、人を傷つける言葉がありません。柔らかくて温かい言葉ばかりなんです。親御さんや大人が絵本を通じてその言葉を子どもたちに渡すことで、子どもたちは大人になったときにも、温かい言葉でコミュニケーションができるんです。言葉は思考をつくり、思考が行動をつくる。どんな言葉と出会うかは、子どもたちの将来をつくる大事な基盤になります。
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①パラスポーツ普及の一環で車いすバスケットボールに挑戦する越路西小学校の子どもたち
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②子育ての駅「てくてく」での読み聞かせ。市内13カ所の子育ての駅では、子育て講座・相談などで親子をサポートしている
市長 佐藤さんは「農家の嫁」になりたかったと伺いました。
佐藤 学生時代に手伝った農業が楽しくて、農業を仕事にしたいと思ったんです。でも当時、農業ができる「就職先」はほとんどなかった。それで農家の長男を探しました!
全員 それはすごい!
市長 今は女性農業者団体の代表もされています。どのような思いから団体を立ち上げたのですか。
佐藤 農業の経営者の多くは男性で、会合がたくさんあって集まる機会も多いです。でも、女性はそういう場がなくて私にはあまり情報が入ってこなかった。自分のやりたいことがあるときや困ったときに相談できる仲間がほしかったんです。
市長 仲間の存在は力になりましたか。
佐藤 食育事業やマルシェ、研修や交流会など、仲間とやりたいことを実現できるようになりました。パッケージのデザインを工夫しようとか、おしゃれな作業着があれば、テンションが上がるね、などと意見交換もします。
市長 やはり女性の視点が入ると変化につながりますね。市では最新の農業技術を体験できる拠点「スマートアグリ長岡」を整備しました(写真③)。農業は男性の力仕事というイメージを変えて、女性農業者が一層活躍するきっかけの一つになればと思っています。
山田 佐藤さんは障害のある人とも一緒に農作業をしていますね。
佐藤 全ての人が活躍できる場があったらと考えて、手伝いをお願いしています。小豆に似たささげ豆を収穫して、一緒に殻をむきます。珍しい作物なので、米の脱穀機のような機械はなく手作業です。
市長 ものづくりのまち長岡の技術なら、機械を作れるんじゃないですか。
長井 すぐにでもできそうです!長岡の企業には、県外の人がびっくりするすごい技術者がたくさんいます。その技術を子どもや若者に見せたい。子どもたちのロボット作りに関わり始めた頃の教え子の中には、ロボカップの運営に協力して今の子どもたちに指導してくれる人もいます。育った学生が子どもたちを指導する循環ができていることは、長岡の強み。長岡のものづくりには希望があふれていると思います。
市長 市では、多くの人から長岡の優れたものづくり技術を知ってもらい、楽しさを体験してほしいと「ものづくりフェア」や「メイカーズながおかまつり(写真④)」を開催しています。今年も2月にあります。16ページへ
長井 ものづくりが趣味の個人からプロのエンジニアまでさまざまな人が集まります。違う分野の人と話すと、新しい発想につながったりするんですよ。
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③情報通信技術や地域資源のガスを活用した次世代型園芸施設
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④自由な発想でものづくりをする人が集う「メイカーズながおかまつり」。さまざまな分野でものづくりをする人が出会う場を創出する
市長 昨年7月に国漢学校の跡地にオープンしたミライエ長岡は、学校外の学びの場でもあります。価値観が多様化する今、学校で学べないこともたくさん出てきました。やりたいことが探せない子もいるでしょう。
長井 教え子の中には、学校にはほとんど行けないけれど、ロボット作りには行きたいという子がいました。学校は苦手でも、好きなことだとどんどん学習意欲が沸いてやる気になる。
市長 ものづくりやプログラミングを学んだり、eスポーツ(写真⑤)をしたりと学校とは違う環境を用意したい。ミライエ長岡では、子どもたちの好奇心を刺激し、アイデアの実現を応援する小学生向けのワークショップ「ミライエクリエイティブキッズ(写真⑥)」のようなイベントを開催しています。13ページへ
長井 私はミライエ長岡で、業種や世代などの垣根を越えた技術者の交流をしたいんです。5階のナデックベースのものづくりラボには3Dプリンターもある(写真⑦)。そこに行けば教えてくれる人がいる環境は素晴らしい。技術が集積する長岡の新しい1ページを作りたいです。
市長 さまざまな人が集まりイノベーションの拠点でもあるミライエ長岡。ここは開かれた場所です。分野や年代の垣根を越えて交流し、議論する場として活用してもらいたいです。
佐藤 女性農業者の仲間と利用してみたいです。違う業種の人とのつながりで、新しいものが生まれる可能性もありますよね。
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⑤年齢や体格に関係なく楽しめるeスポーツの体験会
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⑥小学生の創造力を育むワークショップ「ミライエクリエイティブキッズ」
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⑦ミライエ長岡のものづくりラボ。3Dプリンターやレーザーカッターなどを備え、試作品やオリジナル作品を自由に作ることができる
山田 これからが楽しみになってきました。長岡の明るい未来のために大切だと思うことや今後の目標を教えてください。
佐藤 私は挑戦を続けることが大事だと思っています。一緒に頑張る仲間がいるとすごく力になるし、仲間が新しいことを始めるときのワクワクが大好きなんです。農業に関わる女性を増やし、仲間の輪や農業の魅力をもっと広げていきたいです。
松田 仲間の存在は大切ですね。障害者スポーツのチームがなく練習拠点に困っていた私を、長岡ACのコーチや仲間が気持ちよく受け入れてくれました。パラ陸上を通し、大きな夢を持てることの素晴らしさを感じています。
廣川 松田さんに多くの支えがあったように、全ての子どもと親を周りがサポートする環境があるといいですね。自分の意見や気持ちが受け入れられているという安心感があってこそ、怖がらずに挑戦を続けることができると思います。そのためには、価値観を固定しないことが大事。一人ひとりが考えを持ち寄ることでイノベーションが生まれるのではないかと思います。
長井 私の人生は失敗だらけです(笑)。でも、失敗ほど自分を伸ばしてくれるものはない。失敗すると悔しくて、徹底的に原因を考えます。失敗の中に学びがあることを伝えながら、子どもたちの成長を支えていきたいです。
松田 私はスタートの反応が苦手で失敗の連続でしたが、それをバネに練習を続けています。今の目標は、強化指定選手になること。たくさんのライバルと切磋琢磨した先に、5月の世界選手権や8月のパリ・パラ五輪があると思っています。
市長 楽しみですね。ぜひ長岡の子どもたちや若者に勇気を与えてください。
山田 市長、長岡の未来は明るいですね。
市長 みなさん一人ひとりの活動が長岡の大きな力になっていることに、元気づけられました。〝ひとづくり〞は〝まちづくり〞。長岡の未来には希望があると改めて感じました。この地に息づく市民協働や米百俵の精神で、子どもたちや若者の挑戦を応援し、夢をつかめる長岡を一緒に盛り上げていきましょう!
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失敗の連続をバネに挑戦する。無駄なことは絶対ない
松田 將太郎(まつだ しょうたろう) さん
小学5年生から陸上を始め、長岡市立高等総合支援学校在校中から長岡ACに所属。令和5年のジャパンパラ陸上競技大会100mと200mで2冠を達成。2024年のパリ・パラリンピックを目指している。
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松田選手(中央)を支える「チーム將太郎」の大関監督(右)と小川コーチ。夢を実現するため、共にハードな練習に取り組んでいる
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温かい言葉で育った子どもは、温かいコミュニケーションができると思います
廣川 佳予子(ひろかわ かよこ) さん
長岡市教育委員。絵本と人が出会う場、人と人がつながる場をつくりたいと書店「リトルブックス」を開業。絵本セラピストの資格を持ち、児童養護施設や保育園などでの絵本講座のほか、大人向けの絵本セラピーなども開催している。
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大人向け絵本講座。絵本を通じて自分の気持ちを言える機会を届けている
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優れた技術力を若者へ。「ものづくりのまち」の新しいページをつくりたい
長井 大(ながい まさる) さん
(株)ナガイ代表取締役社長。令和4年設立のながおかメイカーズ・クラブの代表。ミライエ長岡を拠点に、ものづくりをする人(メイカー)が集い成長するコミュニティの創出を目指す。
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ロボットのプログラミングをする子どもたち。答えが無数にあるロボット作りは、創造力を高める
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自分と仲間を信じて一歩を踏み出す。大好きな農業の魅力を広めたい
佐藤 佑美(さとう ゆみ) さん
長岡市農業委員。結婚を機に農業を始める。女性農業者でつくる「新潟県中越地域女性農業者コミュニティnowa(ノワ)」を結成。子どもたちや障害者と農業をつなぐ活動にも取り組んでいる。
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栖吉小学校の稲刈りの授業。子どもたちに、農作物や土に直接触れてもらうことを大切に活動している
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長岡には子どもや若者を支える大人がいる。安心して挑戦してほしい
磯田 達伸(いそだ たつのぶ) 市長