自分たちの力で、住みよいまちを守っていく ― 中静さん
山岸麻美 さん
子育てサークル「おぐにママさんの会」運営
中静 勝 さん
希望が丘 「安全安心ステーション」代表
磯田達伸
長岡市長
小林礼子 さん
表町「まちなかコミュニティ食堂」代表
木村勝一 さん
「てらどまり若者会議〜波音(はね)〜」代表
価値観やライフスタイルの変化を背景として、都市圏を中心に地域のつながりが希薄化しつつある日本の社会。
長岡市でも今後、人口減少や少子高齢化が進む中で、地域のつながりをどう保っていくかが大きな課題となってきます。
2020年、次期長岡版総合戦略がスタートする節目の年に、地域活動をリードする市民のみなさんと共に、地域の力を活かして住民がつながる「地域共生」のまちづくりを考えます。
市長 あけましておめでとうございます。
全員 おめでとうございます。
市長 今日は、地域活動をリードするみなさんにお集まりいただきました。
長岡のまちが将来にわたって元気で、市民生活を豊かなものにするため、私は安心して暮らせるまちの礎となる「地域のつながり」を強く太くしていきたいと思っています。市民同士はもちろん、市外から移り住む人も包み込み、多様な価値観を尊重しながらつながっていく、そんな「地域共生のまち」をつくることが、長岡のまちの未来を明るいものにします。
長岡に住むと安心だ、快適だ、子育ても長岡で、という人が増えてくる。また、若者も長岡に帰ってきて就職するという流れも出てくるでしょう。
地域に根差した活動で、住民のつながりづくりに取り組むみなさんから、活動に込める思いをお話しいただきたいと思います。
市長 長岡の地域共生のまちづくりは、昭和63年に始まった 「ともしび運動」(写真1)にさかのぼります。高齢者も若者も障害のある人も、全ての人の多様性を認め、互いに支え合うコミュニティづくりを進めてきました。
この流れを受け現在、各地域のコミュニティセンター(以下、コミセン)では市民が主体となって、福祉サービスや子育て支援、文化活動、健康づくりなどが活発に行われています。
中静 希望が丘地区は、地域のことは地域でやろうという思いが第一にあります。コミセンを中心に学校、連合町内会など、地域全体が同じ方向で同じことを考え、力を出し合ってやっていこうというのが活動の基本です。
市長 まさに「ONE TEAM(ワンチーム)」。昨年活躍したラグビー日本代表のように、多様性が調和し、大きな力を発揮しているわけですね。
小林 表町地区は、ビルが建ち並ぶまちなかの地域です。ありがたいことに小学校とコミセン、児童館が一つに凝縮されていて、放課後子ども教室(写真2)や会食サービスなどに子どもからお年寄りまでたくさんの人が集い、交流しています。
市長 コミセンがまちなかのオアシスになっているんですね。
小林 はい。配食サービスは、住民による見守り活動も兼ねています。地域の高齢者や子どもをみんなで見守って、一緒に暮らしています。
山岸 母子保健推進員として、また、私自身4人の子どもの母親として、小国地域で子育てサークル「おぐにママさんの会」の運営に携わっています。おぐにコミセンでお母さんたちがご飯を食べたりおしゃべりしたり。赤ちゃんからお年寄りまで一緒になって支え合い、育み合いができればいいなと思っています。
市長 子育てに、サークル活動に大奮闘ですね!
山岸 大変です(笑)。 でも、子どもたちやママさんたちの笑顔で私も元気をもらっています。
木村 若者の視点から寺泊地域のまちづくりをしようと「てらどまり若者会議〜波音(はね)〜」を立ち上げました。コミセンも使いながら、20人ほどで活動しています。寺泊は「魚の市場通り」で有名な観光地です。寺泊の名前のとおり歴史的な寺院や文化財も多く、海も山もあり、自然はすごく豊か。地域活動を通して新たな魅力の発見もありました。
観光客だけでなく、住民も楽しめる地域を自分たちの手でつくっていきたいです。
市長 私も地域の行事に参加させてもらい、みなさんのお話を聞くたびに、住民同士が支え合い、自分たちで地域をつくっていこうという地域共生の心が、しっかり息づいていると感じます。
市長 みなさんはコミセンを中心に活動しているんですね。市内にはコミセンが37カ所あって、年間で約70万人が利用しています。それだけの人が毎年活動しているのは、長岡の大きな特徴だと思います。
中静 希望が丘では、コミセンまつりに約3千人が参加します。小学校が道路を挟んで目の前にあるので、まつりの日は学校行事も合わせてもらい、自由に行き来できるようにしています。
木村 寺泊はコミセンが内陸部にあるので、その立地はうらやましい!
中静 昨年7月にはコミセンに「安全安心ステーション」を開設しました。警察や市からの防犯・交通安全情報の集約と地域への周知、住民による子どもの登下校の見守り(写真3)、子どもの目線を取り入れた防犯マップの作成をしています。今は、小学校近くの道路を時速30q以下に制限する「ゾーン30」という取り組みも進めています。自分たちの力で住みよいまちを守っていく体制をつくります。
市長 地域の安全・安心を守る、素晴らしい活動です。いざという時にこうした地域のつながりが頼りになるんですよね。
小林 私はコミセンがもっとみんなで集まれる場になればいいなと思い、昨年11月に「まちなかコミュニティ食堂」を立ち上げました(写真4)。
市長 プレオープンの日にお邪魔しました。メニューのどれも本当においしかった。カレーライスも中辛と甘口の2種類あって、子どものこともよく考えているなと思いました。
小林 子どもからお年寄りまでみんなが気軽に交流できる拠点だからこそ、コミセンを活用しています。食べに来る人だけでなく、作る私たちも、食堂に関わるみんながつながりを持てる。お母さんの悩みなんかも話して、おしゃべりするだけで気持ちも楽になる。まちなかコミュニティ食堂は、地域に支えられて運営する、地域の絆を深める場所なんです。
市長 子育て支援でもあるんですね。
山岸 私も、小国でそういったお話があれば、お手伝いしたいです。若い人や子どもから、小国で子育てをしたいと思ってもらえるように。
市長 市は補助金の交付や情報交換の場を設けて、子ども食堂やみんな食堂の立ち上げを支援しています。今年も市内でいくつか開設される予定です。地域の活性化のきっかけとして、ぜひ、多くの方から運営に手を挙げていただきたいと思います。
自分たちの力で、住みよいまちを守っていく ― 中静さん
市長 まちの将来を見据えると、若者が果たす役割はとても大きいと考えています。
市は次期長岡版総合戦略を策定中で、今年4月からスタートさせます。まちづくりの主役に「若者」を据え、若者が地元に定着したり、U・Iターンしたりするような魅力的なまちづくりを進めていきます。
生まれも育ちも小国で、地域の担い手の一人である山岸さんは、どんな思いで活動されているのですか。
山岸 「おぐにママさんの会」(7ページ写真5)の発案はママたちや母子保健推進員で、日々の活動の中で講師を呼んで勉強したり、ヨガやお菓子作りをしたりします。私もこの場があったおかげで、日ごろ言えない愚痴も言えました。
自分たちの子どもが小国を大好きになって、小国で子育てしたいと思ってもらうにはどうしたらいいかを日々、考えています。
今、コミセンで寺子屋企画を長期の休みにやらせてもらっています。塾がない小国でも学ぶ機会があるという安心感が保護者に浸透して、もう一人子どもを産もうとか、小国に帰って子どもを育ててみようという若い人の行動につながれば、地域を維持することにもなります。
世代を超えた支え合い、育み合いができたらいい ― 山岸さん
市長 木村さんは、いかがですか。
木村 地域の人も楽しめるイベントをしたいと思い、「寺泊総合型スポーツクラブてらスポ!」と連携して伝統の「浜大漁選手権」を復活させました (写真6)。元は寺泊の町民運動会の競技だったので、老若男女、みんなで一緒に楽しんでくれました。
市長 婚活イベントはやっていますか。
木村 「Loveビーチ」というイベントの企画・運営に波音のメンバーも参加して、若い人に声を掛けたらたくさん来てくれるようになりました。毎回2、3組のカップルが成立して…
全員 すごい!
木村 あと、小学生への食育を意識して、船で釣った魚を自分たちでさばいて食べるという企画をしました。30組ほどを予定していましたが、90組から応募があって、すごい反響でした。
市長 無料だからではありませんか?
木村 参加費は1組5千円いただきました。今後は、補助金に頼らず、自分たちのお金で事業を回していくことを目標にしているので。 「補助金がなくなったから活動が一気に途切れる」なんてすごくもったいないと思います。
中静 素晴らしい。そのくらいの気構えがないと。
木村 お金をもらうと、それありきで活動してしまう。自分の足で歩いていけるような事業をしないと。私たちもいただきましたが、市には市民活動の初期費用だけ支援してもらえれば助かります。
市長 ながおか・若者・しごと機構には「若者提案プロジェクト補助金」があります。
山岸さんたち子育て中の方には、妊娠から育児まで切れ目なく支える「長岡版ネウボラ」の体制を整えています。地域の将来を担う若者が力を発揮できる環境づくりに今年も全力で取り組みます。
まちなかコミュニティ食堂は、地域の絆を深める場所 ― 小林さん
市長 2020年、市は市民生活を支える団体の活動や地域での住民同士の助け合いをしっかりと下支えしていきます。
最後に、みなさんの今後の新しい試みや夢を聞かせてください。
中静 市と協力して、先進技術を活用した子どもの見守りに取り組みます。IoT※タグを持った子どもの居場所を保護者がスマートフォンで把握できる仕組みです。地域のみなさんの賛同をいただき、実証実験を始めます。8ページへ安心して暮らせる地域を子や孫の世代につなげていきたいです。
※IoT(アイオーティー)…身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながる仕組み
市長 それは高齢者の見守りにも応用できそうですね。実は中山間地域でも、ICT(情報通信技術)を活用した高齢者の見守りの検討を始めます。
小林 私は地域の人と協力して、まちなかコミュニティ食堂を継続、充実させていきたいです。他の地域で運営している人とも連携して、横のつながりを築き、市内で地域食堂の輪をさらに広げていけるといいなと思います。
山岸 私自身、生まれ育った小国が大好きです。子どもたちも、「小国が好き」「長岡が好き」と胸を張って言えるような地域にしたいですね。
今後は、親子や若者、お年寄りなど多世代の人に協力してもらい、「地域のお茶の間」企画をしてみたい。それを、アオーレとかまちなかにも出張して、小国の料理を振る舞ったり魅力を紹介したり。
小林 ぜひ、表町にも。
中静 地域間交流もいいですね。
補助金に頼らず、自分の足で歩いていけるような事業を ― 木村さん
小林 小国のおかずを教えてとか、寺泊の魚を一緒にさばきましょうとか。他の地域との交流で食堂の可能性が広がりますね。
市長 地域間交流が盛んになれば、観光客やインバウンド(訪日外国人旅行客)の増加という動きにもつながってくると思うんです。ネットワークが広がれば、まちの共生力も高まります。コミュニティ活動の地域間交流は、これからのテーマになりそうですね。
木村 波音と求草地区や夏戸地区の3つの団体が集まって「寺泊未来会議」というものを昨年の夏に発足したんですが、市外の人と協働する機会もありました。小国地域の雪かきボランティアに来ていた早稲田大学の学生とつながりを持つことができたんです。
今後、その交流を続けて、学生がたくさん来るまちにできたらすごく活性化すると思います。移住者を増やすことが難しくても、若者の居場所をつくることで交流人口を増やしていく。「いつかは戻ってきたい」。市外、県外に出た人がそう思えるようなまちにしたいですね。
地域で安心して豊かに暮らせる、そんな長岡のまちをつくりたい ― 磯田市長
市長 「地域内での連携」「地域間の交流」、そして「市外の人との協働」という新しい「地域共生のカタチ」で、何か新しいものが長岡で生まれそうな予感がします。
市長 今日は「地域の力が、未来を創る」というテーマでお話をいただきました。みなさんの「地域への愛」「長岡への愛」が、長岡で暮らしたい、子どもを育てたいと思える、本当に価値のあるまちにしてくれると改めて確信しました。
これからも市民のみなさんの活動をしっかりと支えながら、地域で安心して豊かに暮らせる、そんな長岡のまちをつくっていきたいと思います。
長岡の活力を高めるための未来への投資である「新しい米百俵」。その土台となり、舞台となるのが、まさに「地域」です。
それぞれの地域、そして、長岡市全体が「ONE TEAM(ワンチーム)」になってスクラムを組み、市民の力、地域の力で、長岡の明るい未来を一緒につくっていきましょう。