市は今、雇用を生み、まちと産業の活力を高めるため、4大学1高専や産業界と連携して、起業家の育成・輩出を目指す事業を展開しています。
昨年6月に、大学・高専と企業の活動拠点「NaDeCナデック BASEベース」を開設。起業家育成講座や創業者交流会、製品の共同開発を行っています。
また、「起業支援センターながおか」には平成26年の開設以降、多くの相談が寄せられ、昨年11月には長岡高専生の会社も生まれました。
長岡の“起業”の未来とは。起業家と起業支援者の2人に聞きました。
【問】産業イノベーション課 ☎39・2402
JPC株式会社 代表取締役社長
吉原 誠さん
平成18年創業、55歳で技術系の人材派遣会社を立ち上げる。産業機械の設計や製造なども展開し今年5月、長岡北スマート流通産業団地への進出を決める。会社の理念は「感謝」。
起業して13年の吉原さん。長岡の人材と技術力を活かして起業に挑戦してほしいとエールを送ります。
ー55歳で起業とは、思い切りましたね。
50歳で会社を辞めた当時、人材派遣事業が急成長していました。しかし、技術者を派遣する会社が少なく、ものづくり品質をうたう日本がこれでいいのかと思い、自社で技術者を育てて派遣する会社を立ち上げました。 社員は地元・長岡を中心に採用しました。みんな、何かしらの人のつながりがあり、受け入れる側も安心するんです。会社を成長させる一番は人材。機械製造の工場をその後に作ったのも、素晴らしい人材に出会えたからです。
ー市は、起業を促進する施策を打ち出しています。
資金や人のつながりなど、起業に関わる全てを自分で解決するのは難しい。私も最初の3年は経営が厳しく、市などからの事業所の賃料や社員の採用への支援、ながおか新産業創造センター(NBIC)への入居は心強かったです。また、その過程で大学の先生とつながりを持てたことも財産となりました。
今はさまざまな支援制度があり、「NaDeC BASE」の開設によって大学・高専との連携も取りやすくなりました。相談できる環境もあって、会社のハードルを一つ一つ上げていけます。起業したい人にとって、協力体制という土台があることは、長岡の大きな優位性だと思います。
ー起業がまちの発展にもたらす効果や期待は。
戦後の日本の発展は、高い技術力と優れた起業家を生み育てたことによるもの。起業は、働く場を作り出し、地域が潤い、社会貢献にもなります。
日本は今、人口減少が進み、災害は以前より増えています。世の中には必要とされるものが数多く存在し、「喜んでもらえること」が事業化のチャンス。しっかりとテーマを持ってチャレンジできれば、まちの活性化につながります。
長岡には技術力も人材もあります。若い人だけでなく、60歳、70歳でも起業に挑戦してほしいと思います。
起業支援センターながおかClipセンター長
高橋 秀明さん
センターの特徴は、起業家の強みや他との差別化を一緒に導き出す“伴走型”支援。長岡商工会議所や金融機関などへの橋渡しなども行う。相談は無料。
5年間で1、500件の相談が寄せられる起業支援センターながおかClipクリップ(以下、センター)で、センター長を務める高橋さん。起業熱の高まりを感じています。
ー長岡では、起業が平成30年に109件と、前年より15%増えています。
起業熱の高い福岡市の担当者は、起業を生む大きな要素はエンジニアとデザイナーがいることだと言っています。長岡はものづくりが盛んで、技術やデザイン、経営を学べる大学や高専もある。起業したい人との連携が進めば、起業がさらに促進されると思います。
ーまちの発展にとって起業とは。
人口減少が進む中で、まちに活気がなくなると交流人口も減り、衰退していきます。 福岡市や千葉県柏市では、新しく生まれる起業家にひきつけられるように、「自分も」と挑戦する人、そこに投資したい人が集まってきます。まちと産業の活力を高め、雇用を生み、生活を豊かにする要素の一つが起業です。
ー高専生による起業も起きています(ページ下)。
起業への機運が高まり、起業家精神を持った若い世代が現れたことは、大きなインパクトを与えたと思います。
「彼らに続こう」という動きも今後出てくるはずです。
まちの活力という意味では、飲食や美容など、生活を支えて日常を豊かにする分野も、彼らのようなハイテク(先端技術)分野も両方大事。いい流れだと感じています。
ー市や大学・高専による起業家育成の講座も進んでいます。
「NaDeC BASE」の開設で大学・高専と連携が取りやすくなり、産業界も加わってきています。
センターが企画し、8月に投資家などを集めて開催した、ビジネスプラン発表会(左写真)は若者や産業界にいい刺激となりました。
ーセンターの今後の展開は。
市が、産業、大学、銀行を含めた応援体制を整備し、補助制度や講座も用意しています。まちを挙げた機運は、起業を目指す人たちの力になります。
センターもこの動きを捉え、全力で支援していきます。
長岡高専生を中心に昨年11月に起業した「拾壱じゅういち・ビッグストーン株」が、川崎町に工場をオープンしました。ベンチャー企業や学生などにものづくりの試作・実験の場としても開放します。
同社は市の学生起業家創出モデル事業≠フ第1号で、産業ロボットの関節部分などに使われる減速機を主に開発しています。
新工場は、市内の企業が建物を貸し、改修や経営などもサポート。市は施設の改装費用などを補助しました。社長の大石克輝さんは「良いアイデアを持っている学生をサポートしたいです」と意気込んでいます。
市内の3社が今後の事業を発表し、東京で起業家の支援をしているNPO法人インデペンデンツクラブの専門家がアドバイスします。
時10月30日(水)午後2時〜5時 場NaDeC BASE(大手通2) ※午後5時から交流会あり(¥1,000円)
時11月15日(金)午後5時〜8時、16日(土)・17日(日)午前10時〜午後8時(計3回) 場NaDeC BASE 定20人先着 ¥2,000円 申起業支援センターながおか☎94・5040